このブログではひとり塾経営をおすすめしています。
しかしそれはあくまで私がそうして来たというだけであって、人を雇うべきという人もいるでしょう。
そこで、人を雇って塾を経営することについて深堀して考えます。
ここでの人を雇って経営するとは「2人以上で1つの教室を経営すること」とします。
人を雇うメリット
利益を伸ばせる
ひとりで塾をやるとなると、受け入れられる生徒の数には限りがあります。
例えばひとりで40人の生徒を受け入れるとします。
1人月単価2万とすれば売上月80万です。利益率70%なら収入は56万です。
一方で例えばアルバイトをひとり雇って生徒数を60人とします。
売上は120万です。利益率70%で84万。1日5時間時給1200円で雇う場合、1日6000円×20日で12万です。よって塾長の収入は72万です。
確かに人を雇えば手元に残りお金は増えそうだな…
もちろん塾のシステムにもよりますが、人を雇うことで対応できる生徒の数も増えるので、その分利益が伸ばせます。
不測の事態に対応できる
ひとりで塾を経営する場合の一番のリスクは塾長に何かあった場合に、代わりに対応できる人がいないという点です。
冠婚葬祭で1日程度休むならまだ対応はできますが、病気や事故で長期離脱を余儀なくされた場合、その間塾は閉めざるを得ません。
もちろん収入もゼロになります。
受験を控えた生徒には特に大きな迷惑をかけてしまうことになりかねません…
一方で社員が1人でもいれば、調整は必要かもしれませんが、塾を完全に閉めることなく営業を続けることができるかもしれません。
少なくとも1人で経営するよりは、こういったリスクをヘッジすることができます。
人を雇うリスク
そもそも有能な人材の確保が難しい
ご存じの通り、今、日本は少子化です。
塾業界にとっては由々しき問題です。
もちろん顧客となる生徒の数が減ることも問題ですが、教える講師の確保が難しくなることも大きな問題です。
少ない講師を各塾が奪い合うことになります。
そうなれば、高い報酬を払うことができる、資本力のある大手塾に有能な人材が集まっていくことは目に見えています。
結果的に、我々のような零細個人塾には、言葉を選ばずに言うと能力の高くない講師しか残らなくなります。
本来は採用できないレベルの講師でも、塾運営を回すために選ばざるを得なくなるかもしれません。
しかし、能力の低い講師に教務を任せることは、個人塾の評判にダイレクトに影響することを忘れてはいけません。
これは個人塾経営において大きなリスクになります。
生徒が少なくても人件費はかかる
満席で忙しい時期であれば講師を1人2人雇っていても、それ以上に売り上げがあるので問題はありません。
しかし塾には、受験生の卒業がつきものです。
生徒の門出を祝えるのは喜ばしいことですが、同時に売り上げ減少という現実に直面するわけです。
受験生が卒業すれば一時的に大きく売上が下がります。
生徒数も減るので塾長一人でも対応できるようになるかもしれません。
だからと言って、アルバイトのシフトを減らしてしまえば、稼げなくなったアルバイトは別の塾を選ぶでしょう。
さらにそれが社員なら、生徒数が減ろうが売り上げが減ろうが給与は毎月きちんと払わなければなりません。
人件費は確実にかかるわけです。
一定の問い合わせが安定してもらえるようになればいいのですが、特に開業初期の状態で人を雇うのにはこういったリスクがあるということも押さえておくべきでしょう。
被雇用者側に有利な制度
日本の法律は、被雇用者側にとって非常に有利にできています。
労働契約法16条によると…
使用者からの申し出による一方的な労働契約の終了を解雇といいますが、解雇は、使用者がいつでも自由に行えるというものではなく、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、労働者をやめさせることはできません。
例えば雇った講師がとんでもなく授業が下手で、どれだけ教育してもうまくならない。保護者側からも『あの先生はちょっと…』と言われる始末だが、当の本人に努力する意思もない。
私からすればこういう講師の教育をする時間も経費も無駄なのでとっととクビにして別の講師に期待したいと思ってしまいます。
しかし、法律上クビにすることは難しいようです。厚労省のHPによると…
解雇の理由として、勤務態度に問題がある、業務命令や職務規律に違反するなど労働者側に落ち度がある場合が考えられますが、1回の失敗ですぐに解雇が認められるということはなく、労働者の落ち度の程度や行為の内容、それによって会社が被った損害の重大性、労働者が悪意や故意でやったのか、やむを得ない事情があるかなど、さまざまな事情が考慮されて、解雇が正当かどうか、最終的には裁判所において判断されます。
簡単に言えば、無能だからという理由でクビにすることはできないということです。
無能な社員とひとり塾長の食い合わせは最悪です。
私たちは本当に強い思いで個人塾を開業しているはずです。身一つで1から塾を始めたわけですから。
しかし、社員やアルバイトが同じ思いを持っているかというと、そうとも限りません。
私は塾長と従業員の塾に対する思いの差は埋められないと思っています。
これも私の性格なのかもしれませんが、塾や生徒に思いをもって仕事ができない人と、ずっと同じ空間に居続けるなんて拷問以外の何物でもありません。
教育したいと思わないんです。
そんなストレスを感じるくらいなら、ひとりで仕事をした方がはるかにいいです。
人を雇って経営するべき人
以上を踏まえて人を雇って経営するべき人は、まず『健康不安のある人』です。
やはり、塾経営で一番避けるべきは通っている生徒や保護者に迷惑をかけることです。
特に受験生は人生がかかっているといっても過言ではありません。
持病があるなど健康に不安がある人は、自分に何かあってもすぐに対応できるように社員を育成して運営することがリスクヘッジになります。
あとは、年収1000万じゃ足りない!という人も、人を雇う必要があります。
ただこの場合、その人がいなくなったら塾が運営できなくなるような状況は絶対に避けなければなりません。
例えばアルバイト1人を雇ってギリギリまで生徒を入れたのに、そのアルバイトが突然辞めてしまった、なんてことになったら、完全にキャパオーバーです。
また社員を1人雇って教室を任せたものの、何らかの理由で退職することになってしまえば、新しい社員が見つからない限り塾を閉めざる得なくなります。
もし人を雇うなら…
- 誰か1人突然辞めても塾の運営ができるように複数人雇用する。
- 自分がオーナー的立場として体を空けておき、たとえ社員が辞めても自分がピンチヒッターで入って回るようにしておく。
1の場合、その時点で必要以上の人数を雇用することになりますから、人件費が余分にかかります。
2の場合、自分がプレイヤーではなくオーナーになりますから、指導をしたい人には不向きです。
うまくいけば利益を最大化できるという意味でメリットはありますが、それ以上にリスクのほうが大きいと私は感じています。
以前セミナーで知り合った方が個人塾を3店舗展開していましたが、最近調べたら今は1店舗しかないようでした。多店舗展開ってそう簡単ではないようです。
仮に人を雇って年収1500万を達成できても、その人がずっと自塾にいてくれるとは限りません。
そういう意味ではひとり塾よりも収入の見通しは立てられないとも言えます。
ひとりで経営するべき人
持病がなく、人を雇うことにメリットよりもリスクが大きいと感じる人は、多店舗展開で利益を上げるより、ひとり塾で利益を最大化することをおすすめします。
唯一のデメリットの健康不安に関しては、必ず毎年1回は人間ドックに行くことでリスクヘッジをしましょう。
私が人を雇わない理由は、上述したリスクもありますが、シンプルにひとりのほうが気楽だからです。
社員を雇うということは、その人の人生を背負うことです。
生半可な気持ちでは無理です。
さらに、雇った人との相性が悪かったら最悪です。
たかだか数回の面談などでその人の本質など見えません。どれだけでもいいようにとりつくろえますから。
私にはそれを見抜けるだけの知識も経験もありません。
私の場合、相性の合わない人と仕事をするストレスを無くすことの方が、人を雇って利益を増やすことよりも優先されます。
同じような考えをもつ人にはひとり塾はおすすめです。
私は今のところ人を雇って経営をした経験はないですが、これからのことはわかりません。ただ、体がもつ限りはひとりで利益の最大化を目指します!