授業が得意だから独立開業?ちょっと待った!

心構え

塾を作って、子供に勉強を教える。

特に小学生、中学生の義務教育レベルの学習内容なら、ちょっと真面目な学生生活を過ごした人なら、教えること自体は難しくありません。

子供に勉強を教えてお金をもらうだけの仕事。

小中学レベルなら俺でも教えられるから、独立しようかな~

しかしやってみればわかります。そんな簡単なものではないということを。

特に軽い気持ちで独立や開業を考えている人。

個人塾の独立開業、舐めちゃダメです。

塾講師の仕事が簡単そうに見える理由

そもそも、なぜ塾講師の仕事が簡単そうに見えるのか。

それは、特に専門性もなく、免許も必要なく、学生時代に教わったことを子供相手に教えるだけの仕事だと思われがちだからです。

トップレベルの大学を受験する高校生への指導や、一部の中学受験をする小学生への指導は高い専門性が必要だと思いますが、少なくとも義務教育レベルなら誰しもが一度は学習しているわけです。

18歳で高校を卒業したばかりの大学生ですら、簡単な研修と学生時代の予備知識ですぐになれる職業です。

個別指導塾だとそうした大学生が即戦力で働いています。

塾講師なんて小中学レベルの勉強を分かりやすく教えるだけなんだから…高学歴の俺なら簡単に稼げるでしょ!

こうした軽い気持ちで独立を決意する人もいるかもしれません。

ここで、もし独立開業に何千万も初期投資が必要となれば、そこで諦める人もいるでしょうが…

塾の独立は低予算でできてしまうわけです。

開業に免許も不要で、参入障壁も低い(というかほぼゼロ)。

これだけ聞けば、誰しもが簡単な仕事だと思うのは仕方ありません。

しかし…アルバイトで6年、独立してひとり塾を10年やっている私の感想。

塾講師の独立開業、思うほど簡単ではないですよ?

独立開業が大変な本当の理由

塾に求められているのは分かりやすい授業ではない

授業が分かりやすければ、評判の塾になる。

このような勘違いしている人が一定数います。

かくいう私も最初はそのように思っていました。

しかし、実際経営してみて、口コミが広まるのに必要なものは、分かりやすい授業じゃないということを実感しました。

口コミが広がるために必要なことは1つ。

とにかく成績を上げることです。順位や点数という数値でわかる客観的データを提供することです。

授業が分かりやすければ成績も上がりやすくなるんじゃない?

分かりやすく、質の良い授業を提供するだけで成績が上がるのは一部の高学力層くらいです。

開業初期にそんな優秀な層がわざわざ新参の名も知れぬ個人塾など選びません。

開業初期に来るのは学年最下層レベルの学力の生徒。

分かりやすく教えて、その場で理解できても、翌週にはほぼ完ぺきに忘れている。

宿題をまともにやれるだけの学習習慣など皆無。

そもそも、勉強を頑張って成績を上げよう!という想いも強くない。

こういったレベルの子たちの成績を上げるのは簡単ではありません。

ただ分かりやすく教えていればいい塾だと思われるなんて、そんな甘い世界ではないのです。

分かりやすい指導は大前提として、いかに開業初期の低レベル層の成績を上げるか。これは本当に難しいですよ

サービスを受ける人とお金を払う人が異なる

例えばジムに通うとき、ちょっとサボりたいとかやる気がないと思ったとしても

う~ん、でもお金が勿体ないからな…。やっぱり頑張ろう

と思いませんか?

お金や時間など自分の資産をはたいてサービスを受けている場合、その対価を必死で得ようとするのは当然です。

一方で学習塾は少々特殊で、お金を払う人と実際にサービスを受ける人が異なります。

親がお金を払うものの、実際塾のサービスを受けるのは子供です。

このようなサービス業は子供相手であれば当たり前です。子供の習い事などはまさにそうですから。

しかし、そういった習い事は基本的に子供が楽しんでいるから、あるいは何らかの夢をかなえる強い意志をもっているから続けているものです。

一方、学習塾は、そもそも子供が楽しんでいくようなところではありません。

サービスを受ける子供が基本的に行きたくないところに親がお金を出しているわけです。

このような歪なサービス業は稀です。

どれだけ素晴らしいサービスを提供していても、すべての子供がその価値を見出そうと動けるわけではありません。

何のリスクも負っていない子供にとって、塾をさぼる、辞めるなんて、大したハードルではありません。

そのような中でずっと通塾を継続してもらうには、やはり成績が上がるという実感が必要なのです。

塾に来る子はみんな頑張って勉強するだろう、やるべきことはやるだろう、なんていう幻想を抱いていると、現実に打ちひしがれることになるでしょう。

参入障壁が低い

先述したように個人塾の参入障壁などほとんどありません。

誰でも簡単に始められるのです。

確かに駅前には大手の学習塾がひしめきあっているもんな…

保護者にとっては選択肢が多すぎるので、何を決め手にすればいいのか迷ってしまいます。

これが飲食店や美容室のような業態なら「一回試しに…」と選んでもらえるかもしれません。

気に入らなければ2度目は行かなければいいだけですから。気軽に選べます。

一方で、塾は一度入ると毎週拘束されますし、結果が出るまで時間がかかるので、一定期間の経過観察が必要です。

気軽に選びにくいのです。

そうして結果的に、ママ友が通っている塾か、安心安全の王手塾に落ち着くわけです。

ぽっと出の個人塾など選択肢には入りません。

そんな中で来てくれた低学力層の成績をしっかりと上げ、口コミを徐々に増やしていくしか生き残る方法はありません。

簡単に始められる仕事ほど、継続して結果を出し続けるのが難しいのです。

独立を考えている人へ

とにかく私が言いたいこと。

『授業が得意、わかりやすく教えることが得意、ということだけで軽々に独立開業をするべきではない』

ということです。

授業の質を高め、わかりやすく教え、成績が上がり、子供が自信をつける姿を見ていたい。

塾講師の醍醐味ですが、もしこれだけに集中したいなら、雇われのほうが確実に集中できます。

独立開業すれば授業以外にやることが山ほどあります。

今まで会社がやってくれていたことをすべて自分でやらなければなりません。

会社の看板もなく、身一つで1から生徒を集めなければなりません。

どれほど分かりやすく教えても、暖簾に腕押しな生徒の成績を上げなければなりません。

授業がどれだけ得意だろうが、わかりやすく教えることができようが、生徒の成績が上がらなければ、何の意味もありません。

分かりやすく教えれば成績が上がる、というのは幻想です。

大手集団塾のように最初からある一定レベル以上の生徒しかいないような環境から独立すると、そのレベルの違いに愕然とするかもしれません。

もう一度言いますが、わかりやすい授業を提供するだけで成績が上がるレベルの子は開業初期に個人塾には来ませんから。

集中力もなく、基礎学力もなく、宿題もサボるような子の成績をいかにして上げるか。

得意な授業でいかにしてこういった子の成績向上につなげられるかを独立を決意する前によく考えてみてください。

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