開業初期で喉から手が出るほど生徒が欲しい時期には何かとキャンペーンを打って、安さ、お得さを前面に出して集客をしがちです。
友人紹介キャンペーンもその一つ。
自塾でも開業初期はいろいろなキャンペーンを打ってきましたが、『これはやらない方がよかった』と思ったものの一つが友人紹介キャンペーンです。
友人紹介キャンペーンの内容
①塾生からの紹介で入塾した場合、紹介を受けた者は入塾金無料+初月授業料半額
②紹介した友人が入塾した場合、紹介した者には3000円の図書カード
自塾ではこのようなキャンペーンを打っていました。
紹介を受けた者は初期費用を安く抑えて入塾でき、紹介した者もキャッシュバックを受けられてお得、といったところです。

でもこういうキャンペーンって大手の塾もたくさんやっているし、なんか問題あるの?
大手塾なら、生徒数の確保が何より優先されるべきことなので、こういうキャンペーンは意味があると思います。
しかし、基本少人数で回すひとり塾においてこのようなキャンペーンを打つことは、長い目で見ればデメリットが多かったと感じました。
友達紹介キャンペーンの結果
お試し感覚での問い合わせが増える
キャンペーンを打った結果、初期費用が抑えらえることになれば入塾のハードルが下がります。

入塾のハードルが下がるのはいいことなんじゃないの?
入塾のハードルが下げることで、本来のサービス内容では問い合わせをしなかったであろう層が、低くなったハードルを飛び越えてきます。
『初期費用が安いならちょっとお試しで塾に行かせようかしら』
『もし成績が上がらなかったら別の塾にすればいいし』
結果、このような『お試し感覚』での問い合わせが増えます。

塾を検討したきっかけを聞いても、友達に聞いて何となく、みたいなあいまいな方が多かったです。
成績を上げるのはそう簡単ではありません。低学力層ほど結果を出すのに時間がかかります。
しかし、お得感だけで選んでいる人は、塾の指導理念や指導方法など大して見ていません。
『お試し感覚で安価で成績が上がればラッキー、ダメなら他へ』という感覚が強い方が多かった印象です。
この意識では成績が上がるまで塾に通ってもらうのは難しいでしょう。
低学力層の子同士の通塾はリスク
自塾でキャンペーンを実施した際、友達を紹介してくれた塾生の多くは低学力層でした。
そして紹介してくれた子のほとんどは低学力な子でした。
これまではひとりで来てしぶしぶながらも手を動かして勉強していたのが、友達と一緒に来た途端に緊張感と集中力をなくしました。
低学力層が友達と一緒に塾に行きたいのは単に勉強へのストレスを軽減するためだけです。
勉強のストレスを受け入れない限り成績が上がることはありません。
さらに低学力層の子が紹介してくれた子もたいていは低学力層でした。
自分よりも成績が低い子が通っている塾にわざわざ行きたいと思わないですからね。
もちろん低学力層の子に来てほしくない、なんてことは決してありません。
こういう子の成績を上げることが塾としての実績につながり、口コミにつながるわけですから。
しかしひとり塾において『低学力層×友達と一緒に通塾』のコンボができると、途端に成績を上げるのが難しくなります。
もともと勉強できないのに、そのストレスを受けいれず、友達で軽減しようとする。
この意識で低学力層の成績を上げるのは困難です。
低学力層はひとりで塾に通って勉強修行する。あくまで自塾ではこのように考えています。

ですので、自塾は友達紹介キャンペーンとは相性が悪かったのです。
退塾率が高い
保護者はお試し感覚で通塾させる。
子供は友達を誘って勉強のストレスから逃げる。
この結果として待っているのは成績不振による早期の退塾です。
ここで一つ自塾の体験談。
塾生のAさんが友達のBさんを紹介してくれました。
頑張ったのですが私の力不足もあり、3か月程度でBさんは退塾してしまいます。
その時、それに引っ張られるようにAさんも退塾してしまう、という謎の現象が起こってしまったのです。
友達と通塾することでストレスを軽減していた分、ひとりでの通塾ストレスに耐えられなくなったのでしょう。
低学力層の子が友達と一緒に通塾するのはリスクです。
友達紹介キャンペーンはそのような状況を生みやすくするものだと私は感じ、廃止に至りました。
入塾を断りづらい
上記の状況もあり、体験授業で生徒の学習状況や様子をよく観察し、あまり好ましくない状態なら断ろうと思いました。
しかし、そこで気づいたこと。
紹介してくれた保護者の手前、断りづらい。
キャンペーンの特典目的で紹介してくれたとしたら、その恩恵が受けられなくなります。
(まあそれでクレームをもらったことはないですが…)
いずれにしても、せっかく紹介してくれたのに断ることは私は気が引けました。
目の前の保護者や生徒のことだけを考えるべきなのに、「紹介してくれた人に申し訳ないか…」などと余計なことを考えてしまう時点で、私には向いていなかったのです。
紹介は自然発生してこそ
結局友達紹介キャンペーンは3年程度で廃止しました。
その後、紹介をくれた生徒に『図書券ないの~?』と言われたり、保護者に『紹介したいのですが何か特典などありますか?』と言われることもありましたが…。
心苦しい気持ちを押し殺して廃止の旨伝えました。
しかしその後、入塾して成績を上げた生徒や保護者から自然と紹介してもらえるようになりました。
そこで気づいたのは、成績を上げた子からの自然な紹介では退塾が起きにくいということです。
事前に塾のホームページをみてきてくださる保護者がほとんどで、塾の理念を理解してもらえていました。
成績を上げたご家庭からの紹介で期待度も高く、一定期間は辛抱強く待っていただけました。
紹介というのは自然発生してこそであり、金銭で無理やり生むものではないと私は実感しました
もちろんひとり塾を運営する上での私の考えであり、キャンペーン自体やそれを行っている塾を否定するつもりなどありませんので悪しからず。