開業初期にやりがちな『サービス指導』に注意

心構え

『サービス指導』とは料金をもらっている範囲外での指導を指します。

頑張っている子にはやはり手をかけたくなって、ついつい指導してしまいたくなる気持ちはわかります。

開業初期で生徒が少ない時期だとなおさらですね。

しかし、特にひとり塾では、サービス指導に対して厳格な線引きが必要です。

指導教科以外は教えない

自塾では、自習における質問を除き、指導教科以外の指導はしません。

例えばテスト前の対策プリントに関しても、指導教科以外のプリントは、たとえ生徒からの要望があろうとも決して渡しません。

自習における質問にしても、聞かれたことにしか答えません。

開業初期はその辺がルーズでした。しかし生徒が増えるにつれて、いろいろな弊害が生じてきたのです。

サービス指導をやってはいけない理由

単価が上がらない

このブログで何度も言っていますが、ひとり塾経営の基本は『少人数高単価』です。

単価を上げるには、生徒に受講回数を増やしてもらう必要があります。

回数を増やしてもらう最も簡単な方法は、受講教科を増やしてもらうことです。

しかし、サービス指導が当たり前になっていると、保護者に新しく授業を増やす必要性が訴求しにくくなってしまいます。

別に授業を増やさなくても先生に聞けば教えてくれるみたいだから、別にいいかしら。

授業を受けなければしっかりと指導を受けられないという状況を作らなければなりません。

不公平さが保護者の不信を招く

保護者のネットワークというのはどこでつながっているかわかりません。

同じ学校、学年でなくても常に保護者同士つながっていると思って公平公正な運営を心掛けなければなりません。

例えば同じ料金を払っていて、Aさんは数学だけしか受講していないのに、Bさんは数学に加え自習の時に英語も教えてもらっているという状況。

これをBさんの親が知ったらどう感じるでしょうか。

不公平だと思いますよね。

と同時に『自習に行けばうちも同じように教えてもらえるということね!』と思われるのも必然。

これは当然断れません。

そうなると料金の発生しないタダ働きが増えていきます。

単価は上がらないのに労力だけが増えていく。

これが開業初期のまだ生徒が少ない状況ならまだ対応できるかもしれません。しかし生徒が増えればいずれ破綻します。

先々問題になったり、破綻してしまうような先例を作ることに対して、我々ひとり塾長は敏感にならなければいけません。

講習受講率への影響

講習は普段の授業と差別化することで、受講する意義をアピールできます。

しかし普段からサービス指導をしていると、そういった差別化をアピールしにくくなります。

講習は塾にとって、利益を上げるための書き入れ時ですが、その訴求にすら影響を与えてしまいかねません。

どこまで許すかの線引きは明確に

塾で料金を頂いて指導している教科と、そうでない教科の指導は明確に線引きしなければなりません。

この線引きをはっきりさせることで、保護者に対して追加受講や季節講習の必要性を訴求しつつ、満足度を下げずに指導を続けることができます。

例えば自塾の場合

  • 指導教科以外で、塾作成のテスト対策プリントや過去問など『もの』は渡さない。(相談に対しては口頭でアドバイスする。)
  • 指導教科以外の質問は、聞かれたことにしか答えない。
  • 指導教科以外の質問で根本的な指導が必要な場合は、別途有料の個別指導を提案する。

上記の内容は明確に線引きします。

さらに『テスト後、指導教科以外の教科の点数や順位には一切言及しない』という姿勢を明確にします。

保護者へのメールでも指導教科以外のことに関して、どれだけ点数が悪かろうがよかろうが一切言及しません。

保護者に『ちゃんとお金を払って指導してもらわないと関心を持ってもらえない』と思ってもらうことが目的です。

私はこの姿勢を明確にしています。これにより以下のようなことが起こるようになりました。

  1. テスト対策講座の受講率が高まる。
  2. テスト後にコース増の申し込みが増える。

頑張っている子には特に手をかけたい気持ちはわかりますが、少人数高単価が基本路線のひとり塾では心を鬼にして明確に区分けするべきだと思います。

『保護者に喜んでもらいたい』は底なし沼

塾で長く仕事をしてきた経験上、塾長が「保護者や生徒に喜んでもらいたい」という想いがそのまま結実するケースはまれです。

なぜなら、喜んでもらおうと行ったとは、少しずつ当たり前になっていくからです。

サービス指導にしても、最初は授業外で教えてくれてありがたいと思うかもしれません。

しかし、それはどんどん当たり前になっていきます。

例えば毎日買い物をするお店で少しサービスをしてくれたとしても、それが続けば当たり前になります。

そしてサービスしてもらえなくなると『あれ、今日はなんでサービスないんだろう』と、あたかもサービスが当たり前のように感じてしまうものです。

もし今後生徒数が増えてサービス指導を廃そうとしたときに保護者に損な印象を与えかねません。

保護者に喜んでもらおうと無料で身を削ることは、底なし沼にずぶずぶと沈んでいくようなもの。

保護者が本当に喜んでくれるのは、サービスを無料で提供するような金銭的援助よりも、テストの点数を上げて志望校に合格させることです。

最高のサービスを正当な対価で提供することが塾がやるべきことではないでしょうか。

無料や値引きで喜んでもらおう、という考えは捨てて、よい指導をするために正当な対価をもらうというプロ意識をもった運営をおすすめします。

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