近年、特に自立型の学習塾では、通塾回数を決めずに定額でどれだけでも通えるというプランが出てきています。
いわゆる「通い放題」というやつです。
このように回数を決めない通塾形態は、ひとり塾経営にとって有益なのでしょうか。
なぜ通い放題が生まれたのか
理由の1つは、自立型教材の発達です。
通い放題は、講師1人で複数人の生徒を直接指導するタイプの個別指導塾にはありません。
生徒が来るときには必ず講師を用意しなければならないからです。急に来てすぐに対応できるものではありません。
その点、自立型教材はいつ来てもパソコンやタブレットさえあれば対応できます。
いつきても対応できるなら、毎日来て勉強できるコースが生まれることも自然です。
また、自習の重要性が周知されてきたというのも理由の1つです。
授業をせずに自習にウエイトを置いた塾がSNSなどを通じて世に広まり、授業を受けるよりたくさん塾に行って、サポートを受けながら自習をしたいというニーズが生まれてきました。
こうして「通い放題」というコースが生まれました。
ひとり塾における通い放題のメリット
通い放題のメリットは単価を上げられることにあります。
週1回や週2回といった日数に制限があるようなコースよりも、毎日塾を利用できるコースのほうが通塾料金を高く設定できます。
例えば週1日1万円、週2日2万円として、週5日3万8千円なら、保護者も高いとは思わないでしょう。
どうせ家にいても勉強しないから…毎日塾に行って勉強してくれるなら嬉しいわ!
特にひとり塾は少人数高単価を目指す必要があるので、単価を上げられる通い放題コースを設定できれば大きなメリットになります。
ひとり塾での通い放題のデメリット
通い放題というのは、自分の都合に合わせていつでも塾で勉強できるということです。
塾側からすれば、いつ、何人の生徒が来るのかを把握できないというのがデメリットの一つです。
確かに、ある日はガラガラである日は満席、なんて状態だと経営しづらいかも…
せっかく塾に来たのに席がなくて勉強できない、という状況にはならないように工夫が必要です。
通塾の時間を制限したり、時間帯だけはあらかじめ決めたり、そもそも全生徒来ても足りるだけの席数を用意するなど、塾のシステムに合わせた工夫が必要です。
通い放題でも毎日来るわけではない
通い放題を受講した子は毎日塾に来て頑張って勉強するだろう!
私も最初はこのように思っていました。
しかし、残念ながら日にちの決まっていない任意の通塾では、よほど目的意識がはっきりしていて、学習習慣がある子でない限り、毎日来ることはありません。
大人でもそうですよね。毎日ジムに行けるからと言って、ちゃんと毎日行ける人は意外と少ないです。
人間とはそういうものです。
特に勉強が苦手な小中学生は、毎日など来れません。そんなにモチベーションは維持できません。
むしろ日にちや時間を決めてメリハリをつけた方が継続しやすいです。
自塾でも小中学生の通い放題は廃止しました。
通い放題の運用のポイント
保護者からすれば高い料金を払っているのに子供が毎日塾に行ってくれないので、顧客満足度が上がらない。
塾からすれば、いつ来るかも分からないので学習計画の立案が難しく成績が上げづらい。
子供からすればモチベーションの維持が難しい。
特に低学力層になるほど、このようになる可能性が高いです。
『通い放題』はある程度学習習慣がすでにあり、少なくとも平均以上の学力がある子でないと、うまく運用することが難しいのです。
通い放題を運用するなら、特に低学力層に対しては任意性を極力なくし、強制力を加えることをおすすめします。
毎日○時から○時まで絶対に来る、という強制ルールにするのです。
行っても行かなくてもどっちでもいいなら子供は基本来ません。しかし強制なら慣れてしまえば習慣化できる可能性が高いです。
自塾では中学生の通い放題はありません。一方週4日まで授業を取得できます。
平日5日のうちの4日ですからほぼ毎日来ることになります。
『通い放題』という任意性をなくし、『週4日』という強制力をもたせているのです。
一方で高校生は通い放題で自習も質問もし放題のコースを設定しています。
高3になると通い放題のコースを取得する子が増えています。単価も3万円台後半になるので、単価も上がり、少人数でも利益を出すことができています。
表現や内容を工夫すれば、通い放題をうまく活用し少人数高単価を目指すことができます。
通い放題を有益にできるか、経営のお荷物にするかはひとえに塾長の運用力次第です。ご参考までに。