生徒が塾を辞めることは非常に辛いことです。
しかし、時に心を鬼にして退塾を勧めることがあります。最初は退塾を勧告し、その後の状況で退塾となります。
自塾で退塾を勧告するケース
自塾で退塾勧告となるケースは2つ。
①私語など他の生徒の学習に悪影響を与える言動をした場合
②塾のルールに沿って課題に取り組めない場合
まあ何度注意してもうるさいやつは辞めさせていいとして…課題が出来なかったら退塾ってのは結構シビアだな
①を理由とした退塾勧告はここ数年はありません。
通塾体験で生徒の言動を見極めることを徹底しています。また数年前に小学生の募集を辞めたことも奏功していると思います。(すべての小学生がそうではないですよ!)
一方で②を理由とした退塾勧告はここ数年で1,2件ほどありました。
指導者ではなく経営者として判断する
塾の指導者なら責任もって指導するべきだろう!
こういった考えもあるでしょう。わざわざひとりで塾をしているのですから、強い思想信条はあるはずです。
しかし、私はひとり塾であるからこそ指導者としてではなく経営者として判断するべきだと思っています。
ひとり塾の秩序や評判を守ることも塾長の仕事だからです。
ひとり塾を流行らせるには、とにかく実績を作り、口コミを広げることが重要です。
一方で指導できる生徒数も限られています。
少ない生徒の中で、実績を作って口コミを広げることは簡単ではありません。
ひとり塾を流行らせるのが難しいのはひとえにこの母数の少なさにあります。
そんな中、まともに宿題をやらず、ルール通りに取り組めず、何度言っても改善せず、結果成績が上がらない。
言葉を選ばずにいうと、ひとり塾にはそのような子の相手をしている余裕などないのです。
たったの3,40人程度しか見られない中で成績を上げて口コミを作っていかないといけないのですから。1,2人こういう子がいるだけでもひとり塾では大きな損失です。
それだけならまだしも、私語などで他の塾生の集中を乱し、結果頑張って勉強している子が辞めるなどとなったら目も当てられません。
こういった小さな亀裂を見過ごすことから、塾の崩壊は始まっていくのです。
勉強できない子を辞めさせるのではないですよ。あくまで塾生としてルールに沿ってできない子には別の塾を検討してもらった方が双方にとって良いってことです。
退塾勧告までの流れ
契約時に説明
これが何より重要です。
どういった場合に退塾勧告となるのかを保護者にあらかじめしっかりと認識してもらう必要があります。
自塾では契約時にチェックボックスにチェックを入れてもらったうえで、署名までもらっています。
以下の行為言動は退塾勧告の対象となります。
退塾勧告を受けた場合、塾を継続するか退塾するかをご検討頂いた上で1週間以内にご連絡頂きます。
継続された場合でも、その後改善がない場合は退塾となります。
一つの例ですが、このような形ではっきりと書いておくことが、のちのトラブルを防ぐことにつながります。
生徒に対する説諭
退塾勧告の対象となる行為、言動をしていたとしても、生徒に対して退塾をちらつかせるべきではありません。
たとえ退塾になるようなことをしたとしても、生徒に対しては退塾の話は一切しません、
まずはしっかりと注意して改善を求めること。
それで改善できれば何の問題もないですから。
保護者への報告
退塾勧告の対象となる行為言動が1つでもあれば、必ず保護者に報告をします。
生徒の状況について共通認識を持ってもらうことが、クレーム防止策として効果的だからです。
その上で、「これが続く場合は退塾勧告の対象となります。」と伝えておきます。
同時に、解決策も提示しておくことをおすすめします。
・もし、家での学習が難しければ授業回数を1日増やし、自習のために通塾する日を設けてはいかがでしょうか。
・どうしても友達としゃべってしまうので、友達と同じ時間に塾に来るのは辞めるのはいかがでしょうか。
・どうしてもスマホを触ってしまうようなので、塾にはもってこないようにして、送迎時の連絡は私にしていただくのはいかがでしょうか。
保護者へ退塾勧告
上記の手順を踏んで、それでも改善されなければ退塾勧告という流れになります。
今までお伝えしてきた件について、改善が見られないため、このままご通塾頂いてもお力になれない可能性が高いです。
お力になれず、またご期待に沿えず大変申し訳ございませんでした。
今後について○○さんと話し合って頂いた上で、来週授業日までにご回答いただければと思います。
いきなり退塾の話をすると、保護者も面食らって反発心が沸くでしょうが、事前にこまめな報告と改善案の提示をしていれば、納得してくれるはずです。
自塾でも1ヶ月かけて報告をしたのち、退塾勧告をしましたが保護者も仕方ないですね…と納得してくださいました。
退塾勧告は悪なのか?
結論、退塾勧告は必要悪であると私は考えています。
退塾は塾としてできるだけ避けるべきことですが、一方で必要な新陳代謝でもあります。
塾への適性には生徒によってばらつきがあります。100%合う子もいれば60%くらいの子もいます。全員を100%にするのは難しいです。
生徒にとって適した環境が別にあるのなら、そちらを選択した方が生徒にとっても保護者にとっても確実にプラスです。
塾にとっても、自塾の指導に適した子が来てくれた方が成績も上がりやすく、口コミにもつながりやすくなります。
退塾勧告は、言う方も心苦しいですし、言われた方もショックですが、子供のためを思えば塾長が負うべき負担だと思います。
目先の授業料惜しさに生徒の問題に蓋をしてしまった先に待っているのは…。
- 成績が上がらず口コミが広がらない。
- 塾の学習環境が悪くなり、真面目に頑張っている生徒が辞めていく。
- 成績が上がらないので結局当該生徒も辞める。
- 真面目な生徒からの評判が悪くなる。
- 当該生徒の保護者からの評判も下がる。
- 口コミが広がらないどころか悪い評判が広がっていく。
一度広まってしまった悪評を払しょくするのは簡単なことではありません。
これらを未然に防ぐためには、「ルールを守れなければ退塾」という毅然とした姿勢を、生徒にも保護者にも示すことです。
そして実際に該当する場合には、規約に沿ってその措置を講ずることです。
ひとり塾においては、塾長がなめられたら終わりです。
塾のたったひとりの責任者として、塾の学習環境を守り、評判を損なわないようにすることが、長く塾を続けるために必要なのです。