ネット上で検索してみると売り上げが1000万を超えたら法人化を検討するべき、という話がよく見られます。
自塾でも1000万を超えたタイミングで税理士に相談してみました。
シミュレーションも踏まえ「ひとり塾」で個人事業と法人、どちらが手元に利益が残るのかを考えます。
なぜ法人化すると良いと言われるのか
消費税納税が2年間免除される
理由の一つは消費税の納税です。
売り上げが1000万を超えると課税事業者となり、その翌々年から消費税を払わなければなりません。
この消費税がバカにならない。
自塾の昨年の消費税納税額はなんと約58万!
個人塾経営者にはきっついなぁ~
法人化すると、事業年数がリセットされ、法人1年目からスタートとなります。2年間は消費税の支払いが免除になるので、その分節税効果があるとのこと。
2年間なので、法人化すれば自塾なら約116万の節税になるということですね。
所得税率が低くなる
もう1つが所得税率です。
年収1000万を超えると、課税所得が900万前後となり、所得税率が33%になります。
一方で法人税率はどれだけ高くても23.4%ですから、税率だけ見れば法人化した方が得というわけです。
その他塾長の属性に応じたメリットがある
例えば配偶者が副業できるのであれば、配偶者に役員報酬を出したり、法人の従業員として給与を出すなど、いろいろなスキームで節税ができるようです。
詳しくは税理士に相談してみてください。
年収800万でのシミュレーション
freeeのサイトで法人化の節税シミュレーションができます。
では、シミュレーションの条件です。今回は以下のようにします。
- 売り上げ1200万で経費335万の年収865万
- 青色申告(特別控除ー65万)で所得課税800万
- 独身(配偶者を経営に関与させない)
会社負担分の社会保険料を利益に残さなければならないので、役員報酬は最大で756万円となりました。では会社にお金を残さずに、受け取れる最大の報酬を得た場合どうなるか。
役員報酬として全額受け取るなら個人事業の方が得ということになります。
また、このシミュレーションで個人事業と法人の見込み納税額がほぼ同じになる役員報酬の額は688万円でした。
てことは…688万円以下の役員報酬に設定すればするだけ、納税額は法人の方が得ということになるわけだ。これなら法人化でもいいんじゃ…
法人の税理士報酬
しかしひとつ注意が。法人化した場合は、税理士にお願いする必要があります。
個人事業の決算は会計ソフトで簡単ですが、法人決算はほぼ無理です。
というわけで、法人決算を税理士にお願いした場合の報酬額を考えます。自塾が以前お話を聞かせてもらった税理士法人の顧問料を参考にします。
年商1000万~2000万の場合で条件は以下のように設定します。
- 1年に1回税理士事務所へ訪問
- 会計ソフトへの入力を代行してもらう
- 決算料込み
この条件で顧問契約を結ぶと、年間318,000円かかります。
個人事業の会計ソフト年間約2万ですから、コストが約30万かかることになります。
法人化するならこの約30万円以上の節税が出来なければ意味ないってことか。
せっかく30万の税金が浮いても、それが税理士報酬で持っていかれては意味ないですからね。
そこで、30万円分の税理士報酬を考慮し、それを相殺しても法人化が得になる役員報酬をシミュレーションしてみると、結果は…510万未満でした。
つまり、役員報酬を510万未満に設定すれば、税理士報酬を考慮しても手元に残るお金は多くなる、ということになります。
法人と個人どちらが得か
以上を踏まえれば結論、年収800万のひとり塾では役員報酬を510万未満に設定するなら法人の方が得、と言えます。
法人化による2年間の消費税免除も考慮すれば、もう少し高く設定しても得と言えそうです。
しかし、これが『得』と言えるかは人によって意見が分かれそうです。
自塾が法人化をしていない理由
結論、自塾は法人化をしていません。個人事業で10年やっています。理由は2つあります。
塾長には節税メリットが薄かった
いろいろと話を聞いてみると、やはり配偶者をうまく経営に参加させることで節税メリットがぐんとあがるように感じました。
よって妻や夫が専業主婦(主夫)で、役員報酬や給与を渡せるような状況であれば節税メリットはあるかもしれません。
私の妻は仕事上、経営に関わってもらうことができなかったので、法人化の節税スキームをうまく活用できませんでした。
会社のお金を自由に使えるわけではない
役員報酬を500万もらっても、残りの300万も俺の会社のお金だから、社長である俺は自由に使えるだろう!
まあ、当然そんなうまい話はないわけで…法人と社長は明確に別人格とされます。
よって会社のお金を社長が自由に引き出して使うことはできないのです。
これも個人の属性によってうまく個人の資産にするスキームもあるようですが、私には使えるものはありませんでした。詳しくは税理士にご相談を。
さらにこの役員報酬は、いつでも自由に設定できるわけではありません。
事業開始月にあらかじめ決めなければならないのです。
てことは、役員報酬500万と設定し、その年に予想以上に売上が上がっても、自分の財布には入ってこないってことか…
『800万所得があっても300万は自由に使えない』そして『たとえ売上が伸びても財布には入ってこない』という状況が私の肌には合いませんでした。
もちろん、会社を清算するときには税金払ったうえで返ってくるので…まあ考え方次第ですね
こんな『ひとり塾経営者』は法人化を検討すべし
こんなひとり塾経営者は法人化するメリットが大きいかもしれません。
売上1000万を超えた課税事業者で、かつ…
- 税理士の顧問契約料を考慮しても法人の方がお金が残る。
- 自由に使えるお金が少なくなっても節税メリットを優先したい。
- 配偶者を役員にできる。あるいは従業員にできる。
(おまけ)塾長の私見
ここから先はあくまで私個人の考え方です。
私が自由に使えるお金が減ることにデメリットを感じる理由を簡単に。
この記事を書いている時点で新NISAが始まっています。会社に入る300万を新NISAで毎月2万5000円×36ヶ月で、年利4%で運用した場合、約368万になります。
NISAで運用するので非課税です。
だったら、会社に眠らせておくより、投資に回した方が良いんじゃないの?ってのが私の考えです。
もちろん会社は会社で節税スキームがあると思います。会社でも投資はできるみたいですし…
この辺も詳しくは税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
あくまで参考までに。