「無料体験」
新聞に折り込みされている塾のチラシには90%以上、この言葉が使われているように感じます。
特に個別指導塾では、入塾前にお試しとして無料で授業を体験できることが半ば当たり前になっています。
塾に入る前に無料で体験できるのって当たり前だと思っていたわ
なぜ無料の塾が多いのか
そもそも無料体験を行う理由は2つです。
- 問い合わせの敷居が下がる
- 入塾後の1人当たりの単価が高く経費を簡単に賄える
無料であれば「とりあえず体験だけでも…」と問い合わせしやすいですよね。
また、授業料が月2万なら1人入塾するだけで年間24万円のお客様です。
入塾すれば体験の数千円の赤字なんてすぐになくなるもんな…
たとえ体験授業を無料しても、その後入塾すれば十分に料金を回収できるというのも無料体験が当たり前になっている理由でしょう。
無料体験に疑問を感じた理由
私自身アルバイトとして塾で働いていた時にも疑問に感じませんでした。
その流れで、ひとり塾を始めた当初も体験授業を無料を実施していました。
しかしあるときに思ったのです。
なんで体験授業って無料でやらなければいけないんだろうか…
体験授業は無料でも、光熱費、システム利用料はかかります。
体験で何もわからない生徒に対して、細かくフォローをいれる必要があるので、塾長の人件費が他の子よりもかかっているということになります。
要するに無料体験は塾からすれば当然赤字なのです。
さらに体験をしたからと言って全員が全員入塾してくれるわけではありません。
自塾では体験期間を1週間に設定していたので、1週間やって入塾に至らなければシンプルに赤字を垂れ流すことになるわけです。
たかだか数千円赤字だったからってそんなに気にすることか?
大手の塾なら取るに足らないのかもしれません。
しかし我々ひとり塾。1件1000円の赤字でも、それが40件なら4万円です。
それを10年続けると、40万ですよ。
年商数億規模の大手塾にとっての数万円の赤字と、年商1000万~1500万程度のひとり塾のそれが、同じ意味をもつわけがありません。
そう考えたときに無料体験は辞めたほうが良いのではないか、と思ったわけです。
体験を有料化した結果…
さて本題です。
業界で当たり前になっている「無料体験」を有料にすると何が起こったのか。
成約率が上がった
有料でも体験してみたいという保護者はその時点で塾への関心が高く、入塾する見込みが高いお客様です。
結果として体験後の成約率があがりました。
具体的に体験にかかる経費を考えると…
光熱費やシステム利用料で1人あたり1000円の経費。さらに塾長の時給3000円として、面談1時間で3000円の人件費。
入塾するかどうかに関係なく、1件当たり4000円の経費が掛かっているわけです。
電気や自分の人件費など目に見えない部分にも経費は掛かっています。ひとり塾経営ではこの意識を持つことが大切です。
成約率が低いと、この経費を赤字として垂れ流すことにわけです。
マンパワーの限られているひとり塾において、成約率の向上は非常に重要です。
売上が上がった
体験を有料にすることで、シンプルに売上も上がります。
1件あたりは小さな売上ですが、ひとり塾経営では小さな売上はバカに出来ません。
1件4000円の体験料金を頂く場合
たとえ入塾しなくても赤字はゼロになります。入塾すればシンプルに4000円売り上げが生じます。
10件体験を受けて頂ければ、それだけで40,000円の売り上げになります。
体験だけでも10件で4万の売上か~
売上以上に「入塾しなくても塾側が損しない」ということが大切なんです。
本気で検討している人だけを相手にできる
実際無料体験をやっていた時には、『塾のことはよくわからないけど、無料だからとりあえず体験させて、子供が良いと言ったらやらせる』みたいな方が一定数いました。
この考え方が悪いことだとは言いません。
ただ『無料だから』という理由だけで問い合わせをし、塾の理念も考え方も理解していない状態で入塾してもらっても後々考え方の齟齬で退塾してしまう子が出ていました。
これならまだ入塾して頂けた分良いのですが…
中には最初から入塾する気など全くないのに、無料だからと来る人もいたのです。
定期テスト前に無料のテスト対策に来て、テストが終わったらこちらの連絡に何の返信も頂けず、既読無視でLINEをブロックみたいな…
言葉は悪いかもしれませんが、無料で釣っても客層はあまり良くないということを実感しました。
一方で有料化した後は、しっかりとホームページを読んで考え方に共感して頂いた上で問い合わせを頂く方も増えたように感じます。
本気で通塾を検討している方だけを相手にすることができるようになりました。
有料体験のデメリット
私自身は開業から5年目くらいに無料体験を辞めました。
開業初期は無料体験をやっていたので、開業初期の段階で有料にした場合どうなるのかは正直わかりません。
確かに誰も知らない謎の塾にわざわざ金払って体験したいと思うかな…
開業初期はとにかく認知してもらうことが大切です。無料で体験を受ける敷居を下げることも必要かもしれません。
自塾の場合5年間である程度の口コミを作ることが出来たと思うので、有料にしても問題なかったとも言えます。
体験を有料化した感想
結論、有料体験にしてプラスのことしかなかったと思っています。
ただ、『もっと早く有料にしておけばよかった…』とは思いません。
開業初期に無料だったからこそ、塾を検討してくれる保護者が増え、結果的に塾の認知度向上につながっていたかもしれないからです。
こればかりは分かりませんね…
いずれにしても、体験の有料化を考えている方にとって少しでも参考になればと思います。